「親の心子知らず」——
親がどれだけ子どもを思っていても、その気持ちはなかなか伝わらないもの。そんな意味の慣用句ですが、介護が始まってからというもの、私はよくこう思うようになりました。
いやいや、今の私はまさに「子の心、親知らず」だよ…と。
こちらは親のためにあれこれ尽くしているのに、伝わらないどころか文句や疑いの目を向けられる。
時には「あんた、泥棒したんじゃないの?」なんて言われる始末。
もう、心がポキッと音を立てて折れそうになりました。
今回の記事では、そんな「伝わらない介護の思い」について、私の体験を交えて綴っていきます。
同じように感じている方の心が少しでも軽くなるように、そっと寄り添えたらうれしいです。
精一杯やってるのに…それでも伝わらない
介護が始まった頃は、
「なるべく負担をかけないように」
「できるだけ穏やかに」
と心がけていました。
仕事帰りにスーパーに寄って親の好物を買って帰ったり、慣れない介護保険の申請手続きをしたり。
もちろん、体力的にも精神的にも簡単なことではありませんでした。それでも、親に快適に過ごしてもらえるならと思って頑張っていたんです。
ところがある日、ふとしたことでつぶやかれた言葉が心に突き刺さりました。
「どうせ自分の都合でやってるんでしょ」
「私の気持ちなんて、あなたにわかるわけない」
愕然としました。
どんなに尽くしても、こんなふうに言われてしまうのか。
じゃあ私は、誰のためにこんなに頑張ってるんだろう?
その瞬間から、心の中にぽっかりと穴が空いたような感覚が生まれました。
泥棒扱いされたあの日、私は静かに泣いた
特にショックだったのが、通帳や印鑑を管理するようになったときのことです。
「通帳がない」
「お金が減ってる」
そう訴える親に、
「管理してるのは私だよ」
と説明しても、目は疑いに満ちていました。
「もしかして…あんた、何か使った?」
その一言で、すべてが崩れ落ちたように感じました。
こんなに信頼されていないなんて。
涙がにじんでも、その場では平静を装うしかなかった私。
けれど、その夜、ひとりの布団の中で声を殺して泣きました。
親子の信頼関係がこんなにも簡単に揺らぐなんて、想像もしていませんでした。
「子の心親知らず」にならないために、どうすればいい?
ではどうすれば、こちらの思いが少しでも伝わるのか。
その答えを私はずっと探し続けています。
けれど、正解なんてきっとないのだと思います。
ただ、ひとつ言えるのは、完璧を目指さないこと。
介護を「親のため」だけにやっていると、どうしても報われなさを感じてしまいます。
だから私は、「自分のため」でもあるんだと考えるようにしました。
親に優しく接するのは、自分が後悔しないため。
たとえその優しさが親に伝わらなくても、自分の良心に恥じないように。
その思いが、なんとか心のバランスを保つ支えになってくれました。
介護は「ありがとう」をもらう場じゃない…とわかっていても
「介護って、感謝を求めるものじゃないよね」
そんなふうに言う人もいます。
たしかにその通りかもしれません。
でも、実際にやっていると、「ありがとう」と一言でも言ってもらえたら…と願ってしまうのが人間の本音。
私たちだって感情をもつひとりの人間です。
心を込めてやったことに対して、否定されたり無視されたりしたら、つらいのは当然なんです。
だからこそ、せめて自分で自分をねぎらってあげたい。
今日はよくやったね、疲れたね、明日は少し休もうねって。
自分の一番の味方は、自分自身であるべきだと思うようになりました。
頼っていい。手を抜いていい。全部を抱え込まないで
私が経験して感じたのは、ひとりで抱え込まないことの大切さです。
介護は孤独になりやすく、誰にもわかってもらえないと感じがち。
でも、話を聞いてくれる友人や、同じように悩んでいる人たちの存在があるだけで、心はふっと軽くなるんです。
在宅介護なら、訪問看護師さんやケアマネジャーさんに相談するのもひとつの手。
プロの目線で助言をくれることもありますし、「一緒に考えましょう」と言ってもらえるだけでも救われます。
無理しすぎないこと。
それは“親不孝”じゃありません。
自分を守ることも、介護の一部なのだと思います。
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介護は心だけじゃなく、体力も気力も必要になりますよね。 そんな毎日を少しでもラクに、そして優しく乗り切るために、私が使ってよかったアイテムを紹介させてください。
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「子の心親知らず」でも、私は私のやり方で
思い通りにいかない介護の日々。
伝わらないもどかしさに、心が折れそうになることもある。
それでも私は、できる範囲で、無理のないやり方で、親と向き合っていこうと思います。
「子の心、親知らず」でもいい。
たとえわかってもらえなくても、私は私なりに愛を込めているから。
それがいつか、ほんの少しでも伝われば、それでいいんです。
介護の中で揺れる気持ちに、答えはひとつではないけれど、
もしこの文章が、誰かの「わかるよ」のきっかけになれたら嬉しいです。
かこ

介護で無理しないための大切な気づき
